【事例】事業再構築補助金の申請・書き方 飲食店①

こんにちは中小企業診断士、ストリートコンサルタントのCyphs(サイフス)です。

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このページは事業再構築補助金に係わる情報発信をしています。

以下のページにこれまでの情報発信をまとめていますのでご活用ください。

https://www.cyphsjp.com/money/jigyou-saikouchiku/wakaru/

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事業再構築補助金の書き方、第3弾です。

今回の想定ケースは、飲食店としました。基本的には事業再構築補助金の概要において事例として飲食店が示されていますので、それを参考にしていただければよいと思います。

 

飲食店の業態転換としては、ケータリング、テイクアウト、移動販売、通信販売、保存食品、冷凍食品の開発な様々ありますが、当補助金のPRチラシにおいても上記のような取り組みが示されていることから、参考にして作成すれば比較的採択されやすいと考えられます。そもそもこの補助金が経営的なダメージの大きいといわれている飲食(観光向け含む)業種のコロナ時、アフターコロナに向けた支援策ともいえるからです。

 

したがって上記のようなテーマであれば相対的な評価(他の申請者との比較)というよりは個別に問題がない取り組みは、拾っていく可能性があります。したがって、奇をてらった取り組みというよりは、素直に業態を転換する方向性で事業を検討することが第一だといえます。

 

ただ、そうはいっても何のビジョンや戦略が無いなかで、何気なく手段を採用するというのでは、この事業が求める生産性の向上につながりません。また、人件費、給与を上げていくことを求めているわけですから、単なるその場限りの代替策を求めているのではないともいえます。

 その点を意識して作成しない場合落とされてしまヴィジョン可能性があります。

 

では、その場限りの施策でないことはどのように見せればよいのでしょうか。C社を前提に考えてみます。

 

ある蕎麦屋さん限界

ある蕎麦屋のC社は、20年ほど前に老舗ののれん分けで駅から離れた商店街において事業を開始しました。

 

商圏は1km~2kmで、ほとんどがリピーターかつ年齢層は高いといえます。昼は高齢者の出前とタクシー運転手、近隣の企業の方が、夜は居酒屋風のメニューも出していることから、単身の男性やファミリーでの食事の場ともなっており、蕎麦屋だけど居酒屋に近い業態となっています。

しかし、コロナを機に店舗での売上が急減しました。もちろん出前については、緊急事態宣言中の自粛ムードの中、特に高齢者向けの需要を取り込みました。

 

一方、最近できた「出前館」「ウーバーイーツ」等の利用による違う飲食店との競争が発生しました。高齢者でもらくらくホン等の普及からスマートフォンによる出前を利用される方も徐々にですが増えていますし、そもそも毎日蕎麦ばかり食べているわけではありません。したがって、出前等のパイは広がりましたが、その市場は様々なチャレンジャーと戦い続ける「レッドオーシャン」となってしまったといえます。

また、重要なこととしては、出前をするコアタイムが昼や夕方となっており、限られた人員で出前を対応することになるため、件数に限界が生じるわけです。当社では4人でお店を切り盛りしています。それでは限界がありますよね。

 

現状の体制で生産性の向上を目指す場合、人員や出前のバイクを増やして対応することがベースとなっており、競争も激化している中で下手に手を出してしまうと売上は上がったが利益が目減りしてしまうことが容易に想像できました。

 

需要が集中する際の競争に参入することは、はっきり言って体力のない当社において難しいと考えており、需要が分散される方法を模索することにしました。

 

蕎麦屋の強みを生かす

社長はあることを思い出しました。コロナにより、2020年の大みそかは自宅で過ごす人が大半だったのです。毎年、年越しそば用の蕎麦とてんぷらを提供していましたが、例年の3倍以上売り上げました。しかも、それ以上の需要があったのですが、材料がなかったわけです。

そんな中、お客さんとしては、蕎麦もいいけどてんぷらだけ欲しいという要望が相当数ありました。

つまり、蕎麦屋さんの天ぷらの総菜としての価値があるのではないかと仮説立てしました。

しばらくの間出前の際に、天ぷらや揚げ物の単独の提供を始め需要がどの程度あるかを確認しました。すると、これまでそばを出前していないファミリー層に天ぷら屋揚げ物の注文が出てくるようになり、需要が相当程度あることが分かりました。

 

そこで事業再構築補助金を活用して新しいビジネスの仕組みを作ってみようと考えました。

 

事業再構築補助金においてはどのようなことを記載したのか

申請内容は以下のとおりです(フィクションですよ!)。

1 自社のビジョン
蕎麦の提供を軸としてきたが、蕎麦に付随する天ぷらや揚げ物、その他総菜がファミリー層や単身世帯などにおいて、スーパーマーケットの総菜よりも価値が高いものとして認識されていることを踏まえ、在宅での食事が増えることを踏まえた、総菜の提供による食卓に笑顔を届ける「食卓に浸透される蕎麦屋」を目指す。

2 SWOT

自社の強みである大量の油でカラッと揚げる技術とそれを食べたいときに届ける配達力を生かすことで、幅広い家庭に食事を届けることを方向性としました。


3 課題解決のためのビジネスモデル

課題解決のためのビジネスモデルとしては、幅広い家庭に直接届ける仕組みは対応しきれない可能性があるため、駅近に物件を借りて保温機を導入し、そこに店舗であげた天ぷらや揚げ物を予約注文を受けた人向けに提供すること。また、揚げ物は必ず自宅でオーブントースター、オーブンレンジで温めることを想定した処理を行うことで、自宅で総菜が完成するように品物を調整しました。

また、短期的には自社商品だけ置く予定ですが、需要が見込めるようでしたら他の飲食店の商品も取り扱うことで、委託販売による収益も見込んでいます。それにより、少ない人数で高い収益を達成することが可能だと考えています。

 

4 ビジネスモデルを満たすための仕掛け

3を満たすためには、夕食などに駅から帰ってくる人をターゲットとして、総菜を引き取り出来るようコード発行の仕組みを用意しました。


5 それを満たすための補助事業とは
保管するための物件の整備・改修等、保温機の導入、お客さんの予約ができるWebサイトの制作

 

6 それらの取り組みが自社の生産性を高めるか
当初の受け渡しは、店舗の人員で対応するため売上に影響があると思われますが、惣菜の明け渡し販売が軌道になれば営業利益、人件費、減価償却費共に付加価値率を高めることは明白です。

7 政策的(地域課題の解決)な意味はあるか
政策的な意味はそれほどありませんね。

以上のような事業の再構築を当社は選択することになりました。

町場の店舗が大掛かりな仕組みを導入することは難しいかもしれませんが、これをきっかけに企業として新しい道を進むことも可能だといういみで、妄想的な話をさせていただきました。

ほどほどに参考にしてください。