3.募集要項(公募要領)の中身

ここでは、実際の要領を確認しながらどんな項目があるのかを示していきます。

 

実際のものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(以下、もの補助)を参考とさせていただきます。

 

国の補助金も東京都などの助成金も基本的な項目は同じですので、まずは構成を理解したうえで、申請の検討を行うことが重要です。

 

1.事業の目的

事業の目的は非常に重要なため、しっかりと理解する必要があります。以下の「もの補助」においては、毎年テーマが変わっています。

始めた頃は、製造業など向けの製品・技術の試作開発及び量産対応でしたが、その後試作開発に寄って行きました。その後、商業やサービスの生産性向上や新たなビジネスモデルの開発なども含まれるようになり、幅が広がりました。

 

 

現在では、中小企業や小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセス改善を行うための設備投資を対象としてます。

最後に書いていた設備投資が目的なわけです。

ということは、本事業においては何らかの設備投資による具体的な取り組みを促進することが前提となります。

 

よくあるのが、目的に沿った書き方ができなくて、目的を満たしていないということで不採択になるケースです。

 

皆様は、この目的をよく理解して対応してください。

 


2.補助対象者

補助対象者において、自社が申請できるかをまず確認することになります。

 

補助対象者は、多くの補助金において中小企業や個人事業主等が大半といえますが、中にはガスや電気、自動車、通信等大手が中心の事業に対するものもあります。

 

我々は中小企業を中心とするものを確認していけば問題ありません。

 

補助対象者の多くは、以下のように越されていきます。

 

①中小企業者であるか

中小企業者の定義は中小企業基本法が基本となりますが、中小企業信用保険法等多岐にわたって中小企業を定義しており、その中のどれか、または全てが対象となります。

 

このもの補助を見てみると、東京都では存在しないゴム製造業が含まれています。また、旅館業も含まれています。

旅館業者は3億円以上の資本と200人以上でないと大企業とならないわけです。つまり、日本のほとんどの地方含めた旅館やホテルが中小企業ということになります。

 

②大企業の影響を受けていないか

大企業の資本が入っていることや会社法で指定する関連会社であるかも確認されます。

これは、要領をよく読めば大体が該当しないことが分かります。

ただ、最近では大手による買収が活発となっており、いつの間にか大手になっているケースもあります。

 

③その他

今回の補助金は組合も対象としているようなので簡単に解説します。

 

 

中小企業による組合としては、企業組合や協業組合、連合会関係等多岐にわたりますが、これらも対象としているようです。

(この補助金ではですよ!)

 

組合ということで?になりますが、組合も多数の中小企業をが束ねており、その企業群に対してサービスを提供したり、デファクトスタンダードであるルールを提供する等様々な事業を行っています。

 

中小企業基盤整備機構は、中小企業や小規模企業の組合化を進めることで大手とやり合っていける環境整備を目的としていることもあり、この組合に対して日本ではそれなりの支援をしているのが一般的です。

 

その他NPO法人など非営利性の活動体に対する支援も行われています。これらの取り組みを含めて対象としており、補助金の支援対象の範囲は拡大傾向にあります。


3.補助対象事業の類型及び補助率等

 

補助金・助成金においてコースを定めていることを示します。

目的において手段が多数ある場合は、このようにコースを定めて多様な企業を集うようにしています。

もの補助では、一般型とグローバル展開型で分けていますね。

つまり、ステージが違う企業が申し込めるようにしています。

国内で取り組む企業は一般型、国外に取り組みを拡大したい、強化したい企業はグローバル展開型ということになります。

 

また、補助率についても定めています。1/3、2/3、1/2等が一般的ですが、3/4や市町村であれば、9/10といったものもあります。

製造や小売、サービスなどは最大で3/4が多いと思われますが、9/10は商店街や団体向けでかつ少額の場合が多いです。

企業規模で補助する補助率を変えるのが一般的になっています。

あとは、先進的な取り組みとなれば補助率が高くなる傾向にあります。

 

 


4.補助事業の要件

 

補助事業には様々な要件がありますが、補助金初心者にはこれを覚えていただく必要があります。

まずは記載の通り指定の期間までに契約、事業実施、支払いまで済ませる必要があります。

 

補助事業は事務処理や事業を実施するうえで設立する基金などの関係から、出納期限が定められています。

事業期間を公募要領に定めていますが、これを遵守したうえで事業を実施する必要があります。

 

もの補助では、「交付決定日」からいつまでにというような指定があります。

その他では、交付決定日にかかわらず、指定する日までに事業を終わらせる必要があるというものもあります。そのため採択の決定を待つ間にも準備しておくことが望まれます。例え、採択されないとしてもです。

 

事業終了というのは経費の支払いをもって終了となります。

つまり、開発が済んだではなく、その際に経費の支払いが済んだ段階を指します。当然ですが、お金をもらうわけですから、お金の話が終始続きます。

事業が終了するまでの期間が要領内で定められています。

 

さらに要件を以下のように定めています。

 

○以下の要件をすべて満たす3~5年の事業計画を策定し、従業員に表明していること。 

・事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加。 (被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均1%以上増加) 

・事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にする。 

・事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加。

 

以前から付加価値の向上をし表示としてきましたが、当要領を見るとかなり企業として本気で取り組むことを求めているようです。

 

給与を増やすと従業員に表明する必要がありますし、具体的には最低賃金を30円あげることが求められます。

更に付加価値をあげるということです。

これは何を意味しているかというと、菅政権でいう生産性の向上を求めているのです。

生産性をあげるためには付加価値額をあげる必要がありますが、そのためには労働分配率を高めなければならないからです。

つまり、これが当該補助金の主目的といえます。

注釈にも気をつけてください。

注釈では、当補助金にかかわらず申請する際に前提としている考え方、必要とする記載方法、「もし」のケースの考え方について述べています。

 

・事業計画

ガイドラインや指針を参考にすることとあります。そのためその方向性、求める理想の結果に近づけるような事業計画にすることが前提となります。そこに、この事業が自社にとってどのような位置づけなのか、自社のビジョンと合致していることを訴えかけることになります。

 

この様な注釈を確認しないで計画書を作成しても、審査で当事業の趣旨と合わないということで、点数は低くなることが想定されます。

 


5.事業のスキーム

 

時間のスキームには、申請から採択までの流れ、更には採択後の流れまでが記載されています。

この流れに対応できることが求められるので、体制が弱い企業に対して見方が厳しくなります。

 

また一目瞭然ですが、電子申請なので、手書きでしか資料作りができない会社は相手にしていないことになります。

つまり、生産性を上げて成長していくわけですか、それなりのITリテラシーを持っているということがlを前提としています。


6.応募手続きの概要

応募手続きの概要や遵守すべき事が記載されています。

いつまでに、どういった方法で申請すべきかが記載されています。


7.補助対象経費

 

補助対象経費は、補助事業において対象とする経費を示しています。
対象とならない経費を捏ねくり回して違う経費にのせたところで支払われることはありません。
中身を見るとやりたい事業において支出しなければならない経費が含まれているか確認してから申請してください。

よくあるのが試作開発の補助金で量産機械や金型を導入しようとすることです。
この場合申請時点で落とされることもありますので、経費が自社にあったものを選択することが重要です。

また、グレーな試作で使うが量産転用できる機械等を含ませて当初採択されたとしても、最後の確定検索で不可になる場合があります。
なお、この補助金は付加価値をあげることを求めていますので、量産機械の導入は対応可能ですが。


8.補助事業者の義務


補助事業者としての義務について書かれています。
もちろん採択されるということは、採択通知に書かれている条項を認めるということになりますので、必ず内容を確認してください。

内容としては計画の変更や中止についての手続きや確定検査を実施する旨。不正があった場合の取り消し等も含めて記載しております。


9.申請に係る留意点


申請においての特に注意すべきところを、まとめて表示したものです。
前項等でも注釈等で書かれていた内容を更に念押しで伝えています。

そのためこちらを先に見てから、計画作成、申請準備を始めるのもありかといえます。


その他:添付資料について

申請に当たって必要となる添付資料を定めています。
補助金で添付の資料の提出を認めている場合は、補足として提出することで、計画書の内容の補完、深掘りが可能となります。
そのため助成金において求められる複雑かつ先進的、高度なことをされる場合は、特にご提出した方が良いかといえます。

 

エクセルなどに計画値を入力することで、自動で付加価値率を計算し、資料化するものもあります。

 

ここでみていただきたいのは賃上げ計画ですね。これを従業員に言うとともに、現場では求める取り組みを合わせて伝えるわけですから、今後の会社のビジョン、あるべき姿を伝え、自社の理想を再設計する姿を見せることを求めています。

これまでは緩かったといえますが、表明が難しい場合は正直都道府県のスモールな補助金・助成金を申請する方が良いかもしれません。

 

会社の従業員と(飲み会を除いて?)明確に意識のすり合わせや方向性を示したことのない企業様は、補助金の申請の前に、ビジョンを設定し伝える力をつけることが求められています。

 

できない場合は、プロの支援もこの際受けてみるべきでしょう。

様々な支援機関がありますので、ご相談してみてください。