【事例】事業再構築補助金の書き方 飲食店②

こんにちは中小企業診断士、ストリートコンサルタントのCyphs(サイフス)です。

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このページは事業再構築補助金に係わる情報発信をしています。

以下のページにこれまでの情報発信をまとめていますのでご活用ください。

https://www.cyphsjp.com/money/jigyou-saikouchiku/wakaru/

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事業再構築補助金ですが、地域の金融機関が力を入れて対応に乗り出してきております。

中堅を目指す場合は、地銀やメガバンが支援していくでしょうが、いわゆる小規模企業においては信金等が認定支援機関又は貸し手となりそうです。
そのため自己資金で対応できない場合は、速やかにメインバンク又は認定経営革新等支援機関として登録のある金融機関に相談してください。
それでは本題に入ります。

飲食店が置かれる環境と見通し

今回のテーマの飲食店の多くは小規模企業が多く、かつコロナの影響をかなり受けています。
政府としてはリモートワーク等の普及により、これまで遅れ続けてきたICTの促進に弾みをつけたいと思われます。
そうなるとオフィスに出社して仕事をするという環境に戻したいのではなく、バランスを取った形で業務や必要性に基づた出社を促進する支援を続けていくと予想できます。
デジタル庁も作りますしね。。。

それは目線を変えれば飲食店等が集積している都心及び駅前の滞在人数が減ることになるため、市場規模・パイが縮小することになります。
それを許容しているからこそ事業再構築補助金では業態転換や新規取り組みを促しているのです。

政府としてはそういう社会になると思われるので、やり方を変えてください。

しかし、「皆さん苦しい状況ですから、その支援として補助はします」というメッセージを送っていると考えてください。

これは長期的にみれば企業への踏み絵ともいえます。この制度を使って成長、変革したいのであれば使えば良い。使わない場合は、淘汰される可能性もあるよ、ということですね。

ある飲食店Cのケース(フィクションですよ)

C社は、都心でカレー店を4店舗経営しています。
コロナによる緊急事態宣言が発来された2020年4月に発令されてから、地獄のような日々が続きました。
それ以前カレーブームが好調にC社の成長を支えてきました。資金豊富でコロナが無ければ5店舗目を出す勢いでした。
いわゆる成長モデルに乗り始めたところで、バイトだけでなく社員も雇用するようになっていました。

加えて、都心の好立地に店舗を出しているため家賃負担が重い状況にあります。


そんな中で、コロナにより売上が100%〜60%と数ヶ月間続きました。

その間、政府系金融機関からの無利息融資、家賃補助給付金、時間短縮協力金、雇用調整助成金等を活用し持たせてきましたが、手をつけていなかった借入の使用も考えなければならない程追い詰められてきました。

その後年末にかけては、自粛の反動で徐々にお客様が戻ってきましたが、4店舗の維持が厳しくなってきました。
これまでも店舗の縮小は考えたのですが、社長はカレー好きの社員が気持ちよく働ける店舗を目指して頑張ってきました。それにこたえる形で社員も頑張ってきました。そんな仲間を切り捨てたくなかったのです。

しかし、1月の緊急事態宣言の再発令により、持ち堪えられなくなる寸前まできました。
流石に一部店舗に閉鎖を決断しようとした時、事業再構築補助金について知りました。

存続をかけた戦いを決意

社長は事業再構築補助金を活用し、既存事業の新たな道を模索することにしました。

その中で自社の商品である「カレー」をどのようにお客さんに届けていくかについて、社内で検討しました。

テイクアウト、宅配、缶詰等様々案はあがりましたが、いずれにおいても今のカレーの状態から大きく変わることはなく、他社も取り組むことが想定できたため、過当競争に身を投じることになるという意見になりました。

 

そこでカレーの価値を伝える手段として、カレーと違う要素を掛け合わせることにしました。スープ(カレー×ジュース)、カレーパスタ(カレー×イタリアン)、カレーパン(カレー×パン)などがあがりました。

その中でカレーパンが良いのではないかと社長は考えました。

カレーパンの提供などはどこでもやっていることなので社内からも反対が上がりました。

しかし、提供の仕方を変えることで、今までと違う物理的価値、情緒的価値を提供できるのではないかと考えました。

 

具体的には、以下を目指しました。

①カレーパンを冷凍で自宅で揚げるだけで、でき立てのカレーパンを食べられる価値を提供(冷凍カレーパンの通販、持ち帰り)

②カレーパン専用のカレーの開発による、カレーパンのOEM生産

 

①の方が事業再構築補助金で求める付加価値を高めることにつながることから冷凍カレーパンの開発と提供体制の構築を申請することにしました。

社長の考えた仕組みも伝えたところ社内からの賛同もあり、申請することにしました。

カレーパンのパン種商売に業態を転換することで、遠方の方にも同社のカレーパンの味を味わっていただけることは、店舗優先型のカレー店にとって大きな変革といえます。

 

以下が事業で取り組むことです。

①カレーパンのパン種の開発をパン屋さんと連携し開発

※自宅で油を使いたくないニーズもあるのでフライパンで揚げることを前提とした種の開発

②持ち帰りへの対応を行うための実験を繰り返す

③急速冷凍により品質のぶれが発生しないような調整を行う

④試食によりニーズを拾いこみ改良を加える

⑤工場の設置・生産ラインの検討

⑥生産マニュアルの開発

⑦賞味期限等の設定検討

⑧最適な容器・パッケージの検討

⑨HPでの注文体制の整備

⑩SNSなどでのPRとフーデックスジャパンへの出展

対象経費を考える

C社において考えた取り組みに係る対象経費は以下あたりだといえます。

①建物費(建物の建築・改修に要する経費)

②パン開発のための外注費(冷凍したものを解凍又は冷凍状態で揚げて美味しいパンとなるか)

③急速冷凍機(パンとカレーを包んで組織が変化、水分がでない間に冷凍するため)

④Webによる注文の仕組み(簡単にHPから注文できるHP作成)

⑤研修費(冷凍食品の開発技術を研修)

⑥知財導入費(冷凍パンの生産技術)

⑦広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)

今回は都心の一店舗を改修して向上にしようとしましたが、冷凍庫を相当数設置できる場所が必要であり、かつ工場として需要の変動に応じた生産ができるように、4店舗中1店舗を閉鎖し、郊外のエリアに工場として建物を借り、そこを改修する経費を選択しました。

 

さて、冷凍自宅で美味しいカレーパンの行く末はいかに。。。

 

ということで以上のように事業を転換する場合などに活用できる補助金だといえますので、是非前向きに検討してみてください。