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損益分岐点の考え方

こんにちは中小企業診断士、ストリートコンサルタントのCyphs(サイフス)です。

 

私は技術者ではありませんが、製品開発の相談を受けることがあります。

 

技術的な内容は専門家ではないので支援できませんが、その技術がもたらす機能や性能を理解し、新たな展開の可能性や課題を検討していく問題解決のフローを踏んでいきます。

その技術等が用途展開が可能で新規ビジネスを考えられるとします。

それを構想段階といいますが、製品コンセプト(簡単にいえば、誰に、何を、どのように)と提供価値などを明確化し製品を具体的に進めていきます。

私の場合は金になるビジネスモデルの開発が主のため、具体的な形から入りたい企業様にとっては、能書きと思われるかもしれません。


自社で考えるのが厳しい場合は、デザイナーやプランナーに依頼して開発や用途展開を模索します。

その場合は、企画構想のステップをお任せしてしまうことも多くなります。彼らは主に売れる製品や商品を開発するので、生産については不十分である場合もあります。もちろん、そこまでできる方も多く存在しますので全てではありませんが。


売れるのだから強気な価格設定とすれば高い原価を飲み込めるだろうという場合もありますので注意してください。

そこで発注側である中小企業様が彼らに依頼する場合に、以下について踏まえたうえで事業化をコントロールしてください。

それは損益分岐の視点です。

 

多くのケースでは、コンセプトが大筋で決まった時点で、コストの基本項目の大体が見えるようになります。

もちろん、デザイナー的にはそんなものを考えていては良いものはできないということで無視されることもありますが。

 

一般的には構想段階でよく使われる4P(製品・価格・流通・プロモーション)のフレームワークの売価の設定する過程でコストアップ(原価積上型)でぼやっとこれ以上の価格にしないと儲からないな、ということになります。


しかし、昨今価格についてはコストアップでは決められず、モニタリングなどをして初めて固まります。

モニタリングの結果、コストアップで考えた売価では収益確保が厳しいということが大半です。


特に中小企業においては強力な調達網による原価を強制的に下げる仕組みがあるわけではなく、想定以上のコストになる場合があります。また、販売力も弱いわけですから高値で売れないことが大半です。

 

あるインテリア製品の開発を進めていた話に途中参加した際のケースで説明します。

 

そのプロジェクトでは製品売価を7,000千円程度で考えていました。

製品を拝見したところ紆余曲折あり、加工に適する金属を当初予定のものから別のものに変えていました。原価が2倍近くになっています。また、事業の推進について確認したところ、メンバーは管理職に近い方による開発で、実行は別の人が担当することになるそうでした。

「おやっもしかして…」と思い、想定原価の積み上げをしてみました。

ご担当者の中では、7,000円の原価として含めていたものは、原材料、加工委託費だけでした。

誰かにやらせるのであれば、給与のうちどの程度をその新規事業に移すのかの考えはありませんでした。また、物流や販売チャネルについて考えはなく、走っていました。

 

結果、200個近く販売してやっと利益がでる形になりました。

人件費をガッツ(サービス残業での対応)でなしとしても100個近く販売して利益になるものでした。

 

もちろん7000円で売るものを10000円以上で売れるようにするという考え方もデザイナーにはあるので、その方向に持っていければ問題は解消されていきます。デザイナーと連携して、高く売るための取り組みを進めることもお勧めです。

 

そのケースでは原材料の見直しか、売価を高めるデザイン性や物理的機能の向上か検討しましたが、結論が出る前に複数のバイヤーの意見をきく機会に恵まれました。ジャブとしてまず「2000円~3000円」で売りたいといわれました。仕入れ値は1500円程度というところでしょうか。

よくよく話を聞くとバイヤーの多くは量販店系の方でしたので、そういう攻め方をするのでしょう。

最終的には4000円が売価の上限で、卸値は2000円程度というところで落ち着きました。

 

7000円で200個以上販売して利益が出るのに、4000円であれば大体400個程度売上る必要が生じてしまいます。

 

もちろん大手量販店に卸すということになれば400個というのはあっというまに捌ける可能性はありますが、全国に数千店舗あるお店に2点ほど在庫してもらったとすると、最初に2000個作るということになり、1千万円近くの投資が必要となります。

 

また、直販で7000円で売る方策を考えることも検討しました。

しかし、その会社では固定費(人件費)をこれ以上かけて販売体制を構築する余裕はなかったため、最終的にこの話は凍結ということになりました。

 

このように事業化については会社の経営判断によるので、現場がいくら想いをもって開発したとしても、損益分岐上理論破綻していれば事業化に至らないことが多いことを認識して開発をしてもらう方が良いと思います。