【事例】事業再構築補助金の書き方 建設業編

こんにちは中小企業診断士、ストリートコンサルタントのcyphs(サイフス)です。

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このページは事業再構築補助金に係わる情報発信をしています。

以下のページにこれまでの情報発信をまとめていますのでご活用ください。

https://www.cyphsjp.com/money/jigyou-saikouchiku/wakaru/

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前回のブログでは、製造業の事業再構築補助金の書き方を、もの補助と比較しつつケーススタディーしてみました。

今回は、建設業編です。
建設業の業種には躯体業者である基礎土木、鳶、型枠大工、鉄筋、型枠解体、土工、基礎配管、荷上げ等から、躯体後の内装に当たる屋内大工、配管、電気配線、空調、吹き付け、ボード、内装、デザイン等多岐に渡ります。

都心の大手に係るデベロッパーに組み込まれてある企業様は、浮き沈みはあるものの安定しており、業界の慣習から中々ゼネコンのスイッチをしません。
一方で5大ゼネコン以外と付き合っている企業様も現在は活況といえますが、受注の変動が大きくなりがちなので様々な企業と取引をして、受注の平準化をしています。

それ以外に町場の工事を一括して受注する地元密着型の建設業者、市区町村の水道や道路等を請負う業者も多数おり、非常に裾野が広い産業といえます。

今回は、5大ゼネコン以外と付き合いをする建設業者様のケースを考えてみます。

【ケース】ある型枠大工B社の申請 型枠大工編

B社は、創業40年で型枠大工を営んでいます。バブル期に先代が立ち上げました。1人親方として始めたが次第に業用を拡大し、5大ゼネコンの孫請けとして大きな建物の工事を受ける程になりました。
しかし、バブルが崩壊すると建設工事が激減し、業界の淘汰が始まりました。

大手ゼネコンの建設量も大幅に減少し、当時は下請けが掃いて捨てるほど多かったことから支援することもなく、阿鼻叫喚、倒産の連鎖となりました。

当社もそのあおりを受けたことから厳しい状況が続きました。その中で、当社は5大ゼネコンとの付き合いから徐々にそれ以外の中堅ゼネコンに広げていきました。相当な借入で苦しかったですが、戦い続けました。

バブル崩壊後単価が急減するなかで、品質もさることながら低コストで請負える材料の在庫管理体制が優れていたことから、それを売りとして社長営業をかけたところ鉄道系や独立系のゼネコンとの接点もでき、現在では付き合いが中心となっています。

 

現在、子息が継いでおり従業員も高齢者の割合が減り、若手も増えて半数を占めるようになりました。特に建設作業員が不況で減少を続けてたため、徐々に単価が上がってきたこと、アベノミクスによる不動産投資が活発になったことが安定化のベースとなりました。

また、型枠材の無駄遣いを減らし、ホームタイやそのほかの金物もなるべく最小限の在庫を保有する体制も引き続き磨いてきました。

その結果無借金経営、資金も増えていきました。

 

そんな中でコロナ感染症が蔓延しました。

今回コロナの影響としては、緊急事態宣言当初であってもゼネコンの稼働が認められていたため、大きな影響はありませんでしたが、令和元年5月頃の大手ゼネコン社員のコロナウイルス感染したことにより、多くの現場が営業停止となり、売上が激減しました。数ヶ月は前年度比80%減というマイナスも喰らいましたが、政府の融資も簡単に受けることができ、難なくその場を凌いだところです。

 

当社は現在外注の職人を除いて、15名の職人を抱えています。職人のスイッチングコストは低いため、受注が減った場合他社に移ってしまうことも多いのですが、今回は業界全体が影響を受けたため、15名の職人の離職はありませんでした。

その後建設需要は、急激に戻りを見せており、非常に忙しくフル稼働で休みが取れないほどになっています。

 

ただ、社長としては、バブル、リーマン、コロナのような影響時においてなるべく浮き沈みの影響を受けにくい会社にしたいという思いがあります。また、長期的にみて建設需要が落ちてきた際に、どう対応するかを考えることが必要だと強く思うようになりました。

 

大工として、若手の確保を進めて取引先を増やすことも考えましたが、職人不足で他社との奪い合い、日当額の高まりでうまくいかない状況にあります。

そこで、自社の強みである在庫の管理を生かして、建設業界において新たなビジネスチャンスを確保できないか考えるようになりました。

若手の大工は、建物の建設に携わりたい気持ちがありますが、半数の高齢化した職人はキツイ現場だけでは長く続けられないと考えています。これらの人が活躍できることも重要だと考えました。

 

建設業者では一般的ですが、材料の置き場を保有しています。現在コロナの反動で仕事が忙しく、現場中心となっており資材管理がうまくいかない状況が発生しており、当社の強みである在庫管理が生かせない状況になっています。

     

新たなビジネスの模索

社長は、考えました。

在庫管理が得意な自社が繁忙や人手不足です上手くいっていないのであれば、それができない大工が増えているのではないか。

そこで周りの型枠大工に確認したところ、置き場の管理が上手くいっていない状況が浮き彫りになりました。

 

そこで自社の強みである在庫管理が活かせないか検討する様になりました。

置き場の問題は、現場を複数抱えている大工に多いことがわかりました。

 

自社から遠く離れた土地の安い場所に置いていること、材料を必要な数だけ運び出さなければならないこと、現場で使用した型枠で再利用できるものは持ち帰って管理しなければならないこと等です。

それらの課題を自社が対応することで他の大工が建てることに集中できるのではないかと考えました。

つまり、型枠大工の業務と管理を分けることです。

 

それらを具体化するためには、システマチックに在庫管理ができることが必要となります。様々な事前投資が必要となることが分かりました。

事業再構築補助金の申請書でどのよう書き込むか

そこで社長は事業再構築補助金にチャレンジすることにしました。

申請内容は以下のとおりです。(フィクションですよ!)

1 自社のビジョン
型枠大工としての価値を高めていくことは引き続き重要だが、培った在庫管理のノウハウ等がサービスとして提供できる段階になっており、それを踏まえたサービス提供型の企業に業態を拡大する。それにより、建設需要が急減した際に、少なくなった建設業者を支えることができるのではないか。
それは、単なる利益だけでなく、建設業の生産性が低い状況の改善に繋げられる社会的な価値がある取り組みであり、当社はそれに果敢に取り組む。

2 SWOT
自社の強みである在庫管理のノウハウは他の大工の抱える課題の解決においても生かせる。また、人手が不足する大工にとっては在庫管理の負担とコストが経営に悪影響を与える状況になっている。

3 課題解決のためのビジネスモデル
課題を解決するビジネスモデルとしては、サービス提供作業である型枠大工の材料の棚卸し、受注量変動の際の材料のが不足をなくす仕掛けとして、各大工の在庫を有償で共有できる仕掛け。戻ってきた在庫の品質管理の3本を各大工の要望に合わせて提供できるビジネス。

4 ビジネスモデルを満たすための仕掛け
各大工の資産の棚卸し、品質の把握、レンタル範囲の設定、費用の算定基準の設定等が可能なシステムを提示。

5 それを満たすための補助事業とは
補助事業としては、システムの開発・導入、クラウドによる提供、人材の採用・育成、在庫の移し替えができる管理倉庫の自社置き場への設置というところになりそうです。
※いずれも対象経費のはずです

6 それらの取り組みが自社の生産性を高めるか
今回は詳細を述べませんが、営業利益、人件費、減価償却費共に付加価値率を高めるとしました

7 政策的な意味はあるか
建設業界の生産性向上は待ったなしなので、自社がその課題解決のために事業再構築を実施することは、社会的価値があるといえます。

以上のような事業の再構築を当社は選択することになりました。
結果はフィクションなのでありませんが、これくらいの内容が書けていれば間違いないかなとは思っています。

皆さま、参考にしていただければ幸いです!